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調律師さん [音楽日記]

私のピアノは、私が10歳の頃から弾いている、
ヤマハのC3(グランドピアノ)です。
ですから、私の年齢より10年若いだけで、ウン十年経っています。

私が子供の頃、調律は、
両親が若い頃からお願いしていた、Yさんという調律師さんが、
調律して下さっていました。
私のために両親がグランドピアノを購入してくれた時も、
Yさんが色々とアドバイスして下さって、一緒に選んで下さいました。
(Yさんは、当時はヤマハに所属なさっていたので)

両親は、Yさんがピアノを調律すると、
音の高さはもちろん、音色まで美しくなる、と言っていました。
でも私は、当時は、他の方の調律を知らなかったので、
Yさんの調律を当たり前のことだと思っていました。

でも、大人になって実家以外のところで、
色々な方に調律をお願いするようになると、
Yさんの調律が普通ではなかったことに気がつきました。

調律したてなのに、何だかハーモニーに違和感があったり、
何だか弾いていて気持ち良くなかったり・・・

時々コンサートで演奏する時、あ、このピアノはとても良い!
と思うことはあっても、調律師の方とはお会いできなかったり、
(演奏家が楽屋入りする前に調律して帰られることが多いので)
お会いしても家が遠くて出張して頂けなかったり、ということがありました。

それでいつしか、うちのピアノの調律については、
あまりこだわってもしょうがないのだ、と思うようになり、
とりあえず弾ければ良い、という意識になっていました。

それが数年前のこと、
某楽器店に電話して、派遣して頂いた若い調律師さんが、
私のピアノを2回調律した後、

「このピアノはもう古くて、調律してもすぐに狂うので、
買い替えて下さい。」
と、簡単におっしゃるのです。
そして、翌日にはサッサと、新しいピアノのパンフレットなんか、
持って来られたのです。

そりゃあウン十年も経っていてポンコツなのはわかっているけれど、
子供の頃に、Yさんと一緒に選んで、
愛着を持ってずっと練習して来たピアノを、
2回調律しただけの方に簡単に買い替えろと言われて、
ちょっとカチンと来ました。
楽器に対する愛情がわからない人なんだなぁ、と思いました。

しかも、その方の調律を私は良いと思っていなかったので、
納得行かなかったのです。
(調律直後でも、音程に違和感がありました)

そこで私は、初めて本気になって、調律師を探し始めました。
でも私は、ダンナさんと結婚してから埼玉県に引っ越して来たので、
音楽家の知り合いが近くにおらず、
人に聞いてもなかなか見つかりませんでした。

結局、ネットを見て、→ピアノ調律.net

一番良さそうだと思った方に頼んでみました。
(その方の調律に対する思いとか、調律して頂いた方々の感想とかを見て)

そこで見つけた方、Mさんは、
私が今までお会いした調律師さんとは全く違っていました。

私が昔お世話になっていた、Yさんが調律している時は、
両親は、お茶だけ出して、後はYさんの邪魔にならないように、
(何せ、音を聴いて合わせる、繊細なお仕事ですから)
静かに別室で待っていました。

でもMさんは、「良かったら作業をご覧下さい。」
とおっしゃいます。
そして、私のピアノを分解しながら、
この力がここに伝わってハンマーが跳ね上がって、
ダンパーが上がって・・・と、解説したり、
ここが錆びて動きが悪くなっていますから、磨きます、
と言って、汗だくになりながら磨いたり、
(弦も手が届くところは全部磨いて下さいました)
すべての作業行程を見せて下さいました。

私はピアノを何十年も弾いて来たけれど、
ピアノの中身がどうなっているのか、つぶさに見たのは、
これが初めてでした。

そして、調律師の方が、すべての音を均一にするために、
一つ一つのキーをどんな風に手入れをして下さるのか、
初めてわかりました。

しばらく、まともな手入れがされていなかったピアノなので、
初回は、4時間近く、そういった手入れをして下さり、
音を合わせる時間が足りなくなってしまう程でした。

調律が仕上がって弾いてみると、
あら、私のピアノって、こんなにきれいな音だったかしら?
いうぐらい、音が違っていました。(音色も音律も)

そして、ピアノは確かに古いけれど、お手入れをすれば、
まだ使えますよ、と言って下さったのです。

あぁ、やっぱり簡単に買い替えなくて良かった、と思いました。

それ以来、Mさんにずっと調律をお願いしていて、
先日3回目をお願いしたのですが、
今回の調律でピアノが、大体本来の響きを取り戻して来たそうです。

自分で弾いてみた感じでも、今までに無かったような音の輝きがあります。

Mさんのお仕事を拝見してから、私もピアノを弾く意識が少し変わりました。
あんなに一音一音が丁寧に、スムーズに、均一に鳴るように、
調整されている楽器なのですから、やっぱり弾く人間も、
一音一音が美しく鳴るように弾かなくては、と思うようになったのです。

そして、ただ音階の練習をしている時でも、
何だか、丁寧に揃えられた音を聴きながら練習するのが、
楽しくなりました。

Mさんの楽器に対する愛情が、私の意識を変えてくれたように思います。
私がピアノを弾く時も、一つ一つの音へ愛を込めるような、
弾き方ができたらと思います。
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